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ガチャ
「乗れよ」
ちょっとした残業を片付けて
会社を出る頃には19時を回っていた。
「あ、ありがとうございます。」
朝の爽やかな笑顔といい
珍しく紳士的な態度で
助手席のドアを開けて
乗れと促す部長
なんだか調子狂うな……
いつもの部長になら一言二言
軽口を返せるのに……
つい、その態度に圧倒されて
素直に返事してしまった。
「ところで、どこへ行くんですか?」
これまた、いつも通りどこかの
居酒屋に行くんだろうなと
思って聞いたつもりが……
部長は
「予約してあるから、そこに向かう。」
表情1つ変えずに淡々と答える。
予約……?
いったいどこへ向かうつもりなんだ?
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まず、先に着いた場所は
高級ファッションブランド店
「えっ、ちょ、部長!こんなとこ何しに!?」
率直な疑問をぶつけるが
部長は気にせず私の手をとると
店内にズンズンと進んでいく
そして
「市ヶ谷様いらっしゃいませ。」
「君、この子に似合う服を見繕ってくれないか」
店員さんが挨拶をすると
その人に向かってとんでも
無いことを言い出す部長
見繕ってって……
こんな高いブランド服
私には買えないって!!
「ちょっと部長!私にはこんな財力ないですよ!?」
「心配するな。いつも日頃頑張っている、お前へのプレゼントだ」
慌てて部長を止めるべく
発した言葉が
朝同様の爽やかな笑顔と
共に闇に葬られる。
「えっと、お名前を伺ってもよろしいですか?」
そんな私などお構い無しに
店員さんも笑顔で話しかけてきたーーー。

