「すっかり暗くなったな…」



最近、残業続きで気づいたら
真夜中なんて事はザラだ。




「おい」




「うわぁおっ!!」




会社から出たところで突然
肩を掴まれ思わず変な声が出た。



あれ?ぶ、部長!?
まだ残ってたのかよ!!




「女の欠片もない驚き方だな」




眉を吊り下げ呆れ顔をする
部長に余計なお世話だと
心の中で中指を立てる。




「まだ残ってたんですね」




なるべく顔は平然を装って……。




「ああ……。だってお前が残業してるの知ってたから」



「ん?何か最後の方聞き取れなかったんですけど」




1人モジモジしている部長を
置き去りにして先に歩いていたせいか
部長の声はまともに届いていなかったーーー。





都会の華やかな街に似つかわしくない
重い足取り(隣に上司付き)で歩いてると
辺り一面に張り巡らされたポスターに目がいく。




今一番人気の若手俳優




露人 波瑠(つゆひと なる)
が写っているポスター。




かなり珍しい苗字だよね…
露人が名前でもおかしくない
まあ、芸名かもしんないけど。



実は密かにファンだったりする。



「はぁ……波瑠くんが私の彼氏だったら、間違いなく人生薔薇色なのに。」



有り得もしない非現実的な
発言をため息混じりに吐く。



「西嶋は……コイツのファンなのか?」



すると突然、部長が質問を
投げかけてきた。




「当たり前じゃないですか!抱かれたい男NO.1ですよ!!私だけじゃなくて世の女性は、みんな露人ファンですって!!」



そして興奮気味に答える私
あ、でも……七瀬はちげーや。



「へぇ、ふーん。ま、お前には無理だろ。芸能人だし?」




「!?!?……部長失礼すぎません!?事実ですけど!?」



女子に人気でも彼女が出来ないのは
きっとこの性悪な性格のせいだろう……。
イケメンが台無しだ……。