金魚鉢

 帰り道、なっちゃんと別れてから、一人でさっきのことを考えていた。


 息苦しいのは恋しているからなのか、とか。

 私は傲慢で我儘なのかってこと、とか。


 だけど、考えても、考えても答えは見つからなくて。


 肩を落として、家路に着いた。


 優ちゃんといると、ときどきどうしようもなく息が詰まる。

 なんて、やっぱりそう思う私がおかしいのかな。


 家に帰って、携帯を確認すると優ちゃんから連絡が来ていた。


『今日は楽しかった? 家に着いたら連絡ください』


 何だろう。

 やっぱり、この違和感。


 何だかしっくりはまっていない感じ。


「はぁぁぁぁぁぁ」


 思わず、長い溜息を吐いて玄関に座り込んだ私の後ろから、兄の声がした。


「うわ、何だそれ。上京した息子を心配するおかんかよ」


 私がびっくりして後ろを振り向くと、兄が私の携帯を覗き込みながらそんなことを言ってきた。


「わ、びっくりした。お帰り、早いね」


「おう、ただいま。てか、お前よくそんな奴と付き合えるよな。優ちゃん、だっけ?」


「あ、うん。でも、優ちゃんは優しいんだよ?」


「だけど、それは優しいに入んないだろ」


 リビングに入って行く兄の背を追いかけて、私は聞いた。


「どういうこと? このメッセージは優しくないの?」


 すると、兄は私のほっぺたを引っ張り、


「優しさってのは、する方や第三者が決めるもんじゃねぇよ。現に、そのメッセージを受け取った琴葉はちっとも嬉しそうな顔してねぇだろ。そんなのは優しいなんて言わないんだよ、馬鹿」