コーヒーをまた一口飲んで、なっちゃんは長い溜息を吐いた。

 ふー、やってられない、って感じの。


 私は不安になって、なっちゃんの顔色を伺う。


「もう琴葉。無駄に心配させないでよね。あんまりにも真剣な顔してたから、一体、何事かと思ったじゃん」


 全く私の相談に取り合う気のないなっちゃんに、私はもう一度食い下がる。


「でもね、あんまりに甘やかされすぎるのって、その、気持ちの良いもんじゃないでしょ?」


「はいはい。そういうの、惚気にしか聞こえないから学校ではしちゃ駄目よ?」


 私の欲しいものとは、違った方向に飛ぶなっちゃんの心配。


「そうじゃなくって……えーっと……」


 どうしたら伝わるんだろう。

 あの居心地の悪さ、というかなんというか。


「うんとね、息が詰まる感じがするの。優ちゃんと一緒にいると」


「それは恋してるからでしょ? きっと、心臓がどきどきしてるのよ。それで居心地が悪いって思っちゃってるだけ」


「だけどっ!」


 なおも食い下がる私に、なっちゃんはぴしゃりと言い放った。


「琴葉、あんまり言いすぎると傲慢になっちゃうから気を付けなさいね。まぁ、あんな綺麗な顔のお兄さんがいたら、佐藤君くらいの彼氏じゃ物足りなくなってくるのかもしれないけどさ」


 あくまでも、なっちゃんは優ちゃんの味方をするつもりみたい。


 なら、私は黙って納得するしかないじゃないか。


「……うん、そうだね。急に変なこと言ってごめんね」


 ショートケーキの残り半分は、ちっとも甘くなんかなかった。

 私は泣きたいのを必死に堪えて、黙々とショートケーキを食べ進めた。