なっちゃんと入ったカフェで、私たちはケーキセットを注文した。

 私は苺のショートケーキにミルクティーを頼んだ。


「げ、何。あんたまたそんな甘いのばっかなの?」


 そう言うなっちゃんは、チョコレートケーキにブラックコーヒーを頼んでいる。

 うん、大人だ。羨ましい。


「だって、好きなんだもん」


 私の言葉になっちゃんは肩を竦めた。

 ま、あんたが良いなら私は何でも良いんだけど、という仕草だ。


 そんないつもと変わらないなっちゃんとの空間が心地良かった。

 張り詰めていた肩の力が抜ける。


「あー、なっちゃんといると本当にほっとするなぁ」


「何、言ってんのよ」


 なっちゃんは呆れたようにそう言うと、コーヒーを一口啜る。


 半分ほどケーキを食べ進めたところで、私は話を切り出した。


「あ、あのね、なっちゃん」


「ん?」


 けれど、そう言ったきり、私の口からは何の言葉も出てこない。

 そのことを不思議に思ったなっちゃんが心配そうに尋ねる。


「何? どうかした? ……もしかして、佐藤君と上手くいっていないの?」


 佐藤君とは、優ちゃんのことだ。


 優ちゃんはみんなと仲が良いから、未だに優ちゃんのことを佐藤君なんて呼んでいるのはなっちゃんだけだと思う。


 そのことに何だか酷く安心した。


「あのね、実はそうなの」


「何かされた? いつも優しく、大事にされているように見えてたんだけど……」


「うん、大事にはされているの。信じられないくらい甘やかしてくれてて」


「へぇ、良かったじゃん」


「良かった、のかな……」


「どういうこと? 彼氏がいないからイマイチ分かんないけど、大事に甘やかされるってのは良いことじゃないの?」


「……私にもそれが分からなくて。ただ、どうしてか優ちゃんの優しさはたまに息苦しいんだ」


 私の言葉に、なっちゃんは何も返さない。

 ただ沈黙が通り過ぎていくだけ。