嗚咽で返事もできない私の顔に、彼は舌を這わせる。
優ちゃんの舌は、ざらざらしていて気持ちが悪かった。
そのナメクジみたいな物体は、ゆっくりと私の涙の跡を通り、また戻って、そして通り過ぎいく。
私はただ、まぶたを閉じてじっと耐えていることしかできなかった。
突然、鼻に軽い痛みが走った。
驚いて目を開けると、私の鼻に噛みついている優ちゃんがいた。
優ちゃんの眉は下がっていて、どこか悲しそうな瞳をしていた。
だけど、私の鼻に噛みついている口元は歪んだ弧を描いていて、そのアンバランスさに吐き気がした。
そこが限界だった。
私は泣きじゃくりながら、助けを求めた。
「ふぇ、お兄、助けて……」
優ちゃんは、私の鼻から口を離した。
それから信じられないくらい大きな声で、唾を飛ばしながら、私に向かって激昂した。
「いつもいつもいつもいつも! いつも、琴はそうだ!!」
完全に怯え切った瞳で、私は目の前にいる優ちゃんに似た人物を見上げた。
「な、何のことですか……」
すると、優ちゃんに似た人は先ほどの興奮が収まったのか、息を整えながら曖昧に笑うと、まるで幼い子どもを言い聞かせるみたいに語り始めた。
「琴、もしかして気が付いていないのかい。琴が口を開くときは、いつもお兄が、お兄が、って言っているんだよ。どれだけ雪さんのことが好きなのかは分からないけれどね。だけど、可笑しいよ、琴。だって、結局は兄妹なのに。自分の兄のことをどれだけ愛しても、琴は報われないんだよ?」
「違う……違うよ……」
私の様子を伺いながら、優ちゃんは続ける。


