そして、そのまま私は玄関から飛び出した。

「優ちゃん! おはよう!!」

 飛び出してきた私を受け止めて、朝から爽やかスマイルを繰り出す優ちゃん。
 彼は、私の彼氏だ。

 優ちゃんは、その名前の通りに優しくて、かっこよくて、学校でも人気者だ。
 だから、女の子たちからもよく告白されていたりする。

 そんな優ちゃんが私を選んでくれた、なんて。
 本当に夢みたいな出来事だったんだ。

 優ちゃんと付き合ってからは、毎日がどきどきして、楽しくて、嬉しくて。
 指先が触れ合ったときには、それだけで私の心臓は爆発しそうだったっけ。

 ただ、付き合い始めて三カ月が過ぎてきた頃から、私はちょっとした違和感を覚え始めた。

 その違和感さえなければ、もっと幸せなのかな。

 優ちゃんの柔和な笑顔を横目に、私は今日もそんなことを考えている。




 二階の窓から、琴葉が彼氏と一緒に登校していく姿を見送る。

「……ちっ」

 楽しそうに笑ってんじゃねーよ。
 そんなにあいつの側は居心地が良いのか?

 俺は煙草に火を付けて、どこか無理して笑っていた琴葉の顔を思い浮かべる。

「付き合って三カ月目、だったか――」

 そろそろ、だな。

 琴葉、お前に思い知らせてやるから、覚悟しておけよ。
 俺の側でしか、お前は呼吸さえままならないんだからな。