ああゆう女性慣れしてるような男性は…苦手だ。
私の元カレが正反対なタイプだったからかもしれない。
私は未だに元カレのことを忘れられずにいる。
病気で入院してる時も毎日のようにお見舞いに来てくれて辛い時はそばで寄り添って話を聞いてくれた、そんな人だった。
結わえていた髪を解いて右耳下で緩く結わえ直す。
そしてため息を付いてエンジンをかけて車を発進させる。
病院への道のりを何となく頭に思い浮かべて予約時間に間に合うように入る。
…検査結果、悪くなかったらいいな。

「宮川さん。」
診察室に呼ばれて検査結果を聞く。
「うーん、やっぱり数値上がってるね。」
何となく、察してた。
貰ってる薬を服用しても何となく効いてないような気がするし。
「移植したら治るけど。」
…それも考えてた。
でもそんな費用、今の私にはない。
それにドナーもいない。
定期的に通ってる病院代や家賃。
携帯代も馬鹿にならないし、ガソリンだって使ってる。
そんな中、そこまでの費用はなかなか貯まらない。
親に頼るのもいいけど妹がいるからあまり頼りたくはない。
…相談くらいならいいか。
「…少し、親と相談します。」
「うん、焦らなくていいからね。
今回も同じ薬出すけど一応抗がん剤も兼ねて点滴しよう。」
ここの病院の先生は皆優しい。
私が昔から通ってるって言うのもあるかもしれないけど。
看護師さんもみな知り合い同然だ。
会社より、家より居心地がいい気がするのもきっと気の所為だろう。

「ー…ただいま。」
病院後。
私はおよそ半年ぶりに我が家へ帰宅した。
「一花?!久しぶり!どうしたの?」
突然の来訪にも関わらず笑顔で迎えてくれるお母さん。
「一花、おかえり。」
いつも帰ってきてるように接してくれるお父さん。
「お姉ちゃん!おかえり!ちょっと勉強教えてよ!」
ここに住んでた時のように分からないことを生徒のように聞いてくる妹の二葉。
「…うん、ただいま。」
身勝手な理由で一人暮らしを始め、突然帰ってくる親不孝者の私。
勇太との思い出が詰まりすぎたこの家をどうしても出たかったんだ。
私にとって最も大切だった人。
…もう2年になるのかな。
耐えきれなくて泣きながら親に一人暮らしを懇願して…
半年前から一人暮らしを始めたのに。
この家に帰ってくるとどうしても勇太のことを考えてしまって辛い。
「一花、ご飯まだでしょ?一緒に食べよっか。」
お母さんがニコニコして茶碗にご飯を装ってくれる。
「…話があって…」
「うん、わかってる。
ご飯食べてから聞くね。」
言わずもがな、お母さんには伝わっているのかもしれない。
私が持病を治したいと思ってることも、費用がないというのも。
この家に帰ってきたら勇太のこと思い出してしまうということも。