「そういえば宮川さん。」
「…はい」
「ここの会社よく受かったね?
ここ漢字検定2級と英語検定2級持ってないと入れない会社なのに。」
「…まあ。
それなりに検定は持ってます。」
長いまつ毛に縁取られた目がゆっくりと俺を見る。
「漢字検定、英語検定、秘書検定、全て1級です。」
…すご…
天才が入社してきた…
これは社長の目に付くのも時間の問題か…
社長直属の秘書が今産休と育休に入っていていないから…
「すごいな…俺2級が精一杯…」
「持ってるからいいじゃないですか。」
「まあそうなんだけどさ…」
総務課に戻ると何やらワイワイ騒いでいる。
「あー、うるさいけどいつもこんな感じだから…
もし苦手だったらイヤホンするなり耳栓するなりしていいからね。」
「…分かりました。」
彼女は俺の隣の席に座りパソコンを立ち上げる。
これからマンツーマンで仕事を教えていく予定だ。
「あ、笹川くん!」
「はい!」
「お昼一緒に食べようね!」
「いいっすよ!」
自分で言うのもおこがましいが俺は案外モテる。
顔も割と整ってる方だと思うし、告白なんてしなくても女の子の方から言ってきてくれた。
身長も高い。
このルックスで今まで俺に落ちない子はいなかった。
隣には綺麗な美少女。
次はこの子を落としてみようかな。
「宮川さんて彼氏とかいるの?」
彼女を舐めまわすように見る。
すると首元にきらりと光るネックレスを発見。
…彼氏いるのかな。
「…いません。」
ぽつりと呟いた時の宮川さんの顔は少し悲しそうで。
華奢な白い手がネックレスを確認するかのように静かに首元に移動した。
「…いたら、きっと楽しいんでしょうね。」
切なげな眼差しでもう一度パソコンと向き合った彼女にかける言葉が思いつかない。
落としてみようかな。
こういう子は割と落としやすかったりする。
宮川さんのことわかってきたら落としてみるのもアリかな。
【笹川将也side END】

【宮川一花side】
この会社での仕事も何となくわかった。
この会社の総務課の人たちが私以外フレンドリーだということも。
ここに来て一日目で何となく察した。
「宮川さんお昼一緒に食べない?」
「いえ、結構です。お構いなく。」
私は元々人と関わることが得意ではない。
それに関わっても自分が消えた時に虚しくなるだけだ。
私の体はそのくらいもろいんだから…
お昼もおにぎり1つとお茶。
これだけあれば1日余裕で越えられる。
「え、宮川さんお昼それだけ?!」
課長が驚いたかのように私のデスクに置かれているお昼ご飯を見る。
「…はい。」
少食というのもあるが、食べるとお腹が痛くなりやすいんだ。
そういう病気も併せ持ってる。