どうして私はこんなに発作が出ているのに笹川さんを探しているのだろう…
前の私なら、もう連絡だけ入れて1人で帰っていたけれど。
今は、笹川さんに会いたい。
「……あー、あと一押しってとこかな。」
…笹川さんの、声?
「あと少しで落ちてくれると思うよ。」
…これ、私のこと?
女の子を落とす、ゲームでもしていたのかな。
「だから、そんなんじゃないって!
そんなのに本気になるわけないじゃん!」
私の、ことかな。
好きになってくれたのかなって思っていたけど大きな勘違いだったみたいだなあ
「…なんだ…そっか…」
情けないなあ
少し自惚れすぎてたみたいだ。
もしかしたら笹川さんが私のこと好きになってくれたのかと思って調子に乗っていたみたいだ。
…折角、服装の系統も変えてみたんだけどなあ…
双葉にも相談して、椎菜にも電話で相談乗ってもらっていたのに、無駄になっちゃった。
笹川さんは電話の向こうの方と電話してて、私には気づいてない…
今ならまだ気づかれずに帰れる。
お祭りの会場も私のアパートから一応歩ける距離だ。
「…何を期待してたんだろう、私」
…笹川さんなら、心を開けると思ってた。
好きになると、思ってた…
「…違うか…」
違うな、私はもう…
「…好きに、なってたんだ…」
自分の気持ちに気づいてないふりをして、目を背けてた。
気づきたくなかった。
「…もう、帰ろう…」
私は笹川さんの近くを離れて、お祭りの通りを横切ってベンチのある公園に向かった。
そしてベンチに腰掛けてカバンからスマホを取り出した。
『今日はありがとうございました。
楽しかったです。』
そうLINEにメッセージを送信する。
すぐに返信が来た。
『え?!帰ったの?!?!』
さっきどんな会話をしていたのか、正直わからない。
もしかしたら私のことじゃないかもしれない。
確認してすっきりするのもいいかもしれない。
けど怖い。
確認して私のことだったら、と考えると怖い。
『はい、本日はありがとうございました
また週明けからよろしくお願いしますね。』
会話を聴いてたって知られたくない。
私だって聞かなかったことにしたい。
『今、どこ?』
…それなのにこの人は、優しいから…
「…っ…」
気づけば私の目から涙が出てきていたみたいで…
頬を涙が伝う感覚があった。
「…もう…帰ろう…」
一生懸命選んだ服も、どんなメイクにしようか考えた時間も、全部…
「…私の…空回り…だったんだなあ…」
…こうなるって想像していなかったわけではない。
寧ろ、こんな無愛想な私にずっと、声をかけ続けてくれて…
優しく接してくれて…気にかけてくれて…
私への態度は全部、あの人なりの優しさと思いやり…私が、無駄に期待してしまっていただけなんだ。