だからこそ今こうして証拠類を提出しにきたんだ。
「君に頼んで正解だった。
あとは任せてくれ。」
社長がそう言ったのを聞いて私はくるりと踵を返す。
「宮川さん。本当にありがとう。」
「いえ、これも全て会社のためなので。」
会社のため。
…とは言うものの、笹川さんのためでもある。
あの人が日に日にストレスでげっそりしてきているのを隣で見てきたから。

「…お疲れ様です。」
総務課に戻ると私は道中買ってきた缶コーヒーを笹川さんに渡す。
「もうすぐ終わりますから耐えてくださいね。」
「え?どう言うこと?」
詳しいことは言えないけれど…
それでもこの人がこれで楽になるはず。
あれだけの証拠を提出したのだから。
篠原親子を崩落させるいいきっかけになったのだから私はこれで落ち着いて仕事ができる。
あの親子がいなければ笹川さんも落ち着いて自分の仕事ができることになるはず。
今はまだ彼女に付き纏われてて仕事が思うようにできてはいないけれど。
「後数日ですよ。」
軽く微笑んで私は自分のデスクに向かった。
笹川さんの分の仕事を終わらせるために。
【宮川一花side END】

【笹川将也side】
宮川さんに意味深なことを言われてから数日。
篠原さんとその父を会社で見なくなった。
どう言うわけか宮川さんに聞いても微笑んでスルーされる。
その微笑みすら今の俺には天使に見える…
これでやっと自分の仕事もできるし平和が訪れた…
それに…平和になった今のうちに宮川さんともう一度出かけたい。
「宮川さ…」
「じゃあ私はこれで…」
仕事が相変わらず早い。
定時間で殆どの仕事を終わらせて残業1時間程で帰って行く。
「あっそういえば、笹川さん顔色戻りましたね。
良かったです。」
ニコッと笑うと彼女はヒール音を響かせながらオフィスを出ていってしまった。
…まあ、いつでも誘えるし、いいか…
俺は次にいつできるかわからない彼女とのデートに胸を膨らませるのだった。
【笹川将也side END】