それもただの写真ではない。
毎回別の男性であり、毎回ホテル街を腕を組んで歩いている。
「…極め付けはこれですね。」
宮川さんが指差した写真には誰かとのLINEのやりとり。
恐らく相手の男性のスマホの画面だろう。
スクリーンショットの写真だ。
「この写真を見た通り、篠原莉里さんは不倫を繰り返し、篠原部長は賄賂出世をした決定的な瞬間があります。
彼らが次何か問題行動を起こした時に、社長に報告するつもりでしたが…」
資料をカバンの中へしまった後、彼女は横目で俺を見る。
小さく微笑んで仕事中掛けている眼鏡を外す。
「笹川さんがもう限界そうなので、次のチャンスはなく、行動に移させていただきますね。」
彼女は天使のような笑顔を俺に向けて立ち上がる。
恐らくもう退勤するのだろう。
「では、また明日。」
小さく頭を下げた彼女は前床にへたり込んだような弱った顔はしていなく、ただ、強さがあった。
前座り込んだのも風邪だったって聞いたし…
もう治ったのだろう。
そう軽く考えていた俺は彼女が辛い思いをしながら俺のために行動しているなんて全く気付かなかった。
【笹川将也side END】

【宮川一花side】
「ー…流石は宮川さん。
私が見込んだ通りの仕事をしてくれたね。」
笹川さんに篠原親子の問題行動を軽く教えてから数日。
私は社長に資料と証拠を提出しに来ていた。
「君を外部取締役にして正解だったよ。
本来ならば会社とは全く関係のない人を外部取締役にするのだけど生憎そこまで能力のある人がいなくてね。
私の秘書として優秀な仕事をこなしてくれている宮川さんに任命したんだ。」
私が経営の勉強をしていたのを見られていたのが社長秘書になったきっかけ。
総務課の仕事もこなしつつ、こなせる量の仕事だけを与えてくれる社長。
そして外部取締役に相応しいかどうかを見極めるための試練として篠原親子の不正及び問題行動。
「これさえあれば篠原親子を会社から出すなんて簡単なことだ。」
簡単、か…
あの2人の問題点を見つけるのなんて簡単すぎた。
簡単すぎて逆に他に問題があったのかと気になるくらいに。
「…でしたらお早めにお願いします。
篠原莉里さんが今付き纏っているのは笹川さんです。
笹川さんがもうかなり参ってきています。」
隣でずっと見てきたんだ。
笹川さんがかなりやつれて疲れてきているかよくわかる。
仕事に集中できないくらい連絡が来ているのも知っている。