…話しかけてこないに越したことはないけど。
同時に心なしか笹川さんも私から遠ざかっていった気がする。
隣のデスクにいるのに話しかけられなくなったし連絡も来なくなった。
…やっぱり私のような愛想のない女より篠原さんのような可愛らしい女性の方がいいのだろう。
顔が愛くるしくて、性格も明るくて、あっという間に総務課に溶け込んだ。
「…資料確認お願いします。」
別に私には笹川さんと篠原さんがどういう関係になろうが興味はないけれど。
それでも自分の仕事を後輩にやらせたまま感謝の言葉もないのは少し腹が立つ。
「…ん?
宮川さん、この仕事って笹川のだよね?」
「…はい。篠原さんの教育でも忙しく手が回らないとのことで私が…」
「いや、じゃあこれまで笹川が提出してきた仕事は全て宮川さんがしていたということか?」
最近やけにミスがないなとは思っていたが…と続ける課長。
やはり気付く人は気づくのであろう。
いくら私の名前で笹川さんの仕事を提出したところで元々私の仕事ではないことを。
「いや、すまない今まで気づけなくて…
いつからだい?笹川の仕事をしていたのは…」
「デスマーチ中頃からお手伝いはしていました。」
「はあああ…」
呆れたようにため息をつく課長。
頭を抱えて唸っている。
その時も笹川さんと篠原さんは場内を歩いている。
私ですらまだ場内を案内されたことはない。
デスクに戻らず休憩に入った私は大好きなコーヒーを飲みながら場内を仲良く歩く2人を眺めた。
腕組みなんかしちゃって本当に仲がいいんだなあ…
お付き合いでもしているのだろうか…
「…まあ、私には関係ないけど。」
今日は勇太の命日だから定時で上がらせてもらうし、恐らく今日笹川さんと顔を合わせることなく上がることになるだろう。
篠原さんが入社してくるまでそれなりに仲良くできていたと思っていた自分がアホらしくなった。
男性たるもの、やはり女性らしさを全面に出している子を放って置けないのだろう。
私も別に守って欲しいと思うようなガラではないし。
…私には勇太がついてる。
それだけで他は何もいらない。
首に下がっているネックレスをギュッと握って私は人の少ない廊下を歩く。
総務課に向かう途中、椎菜に声をかけられた。
「一花さん!」
「椎菜?」
「丁度総務課に用があったので!」
「何か用事でもあった?」
事務課の椎菜は白杖を持ってクリアファイルを抱えている。
いつも私を見つけてくれる椎菜。
弱視で見えることが少なくなった今でも私がいるといつも声をかけてくれる。
「よく私だってわかったね。」
「一花さんはわかります!
清廉潔白なオーラがあるので!
あとみんなとは違う香りがするんです!」
だからはっきり見えてわかりやすいのだという。
自分の匂いなんて気にするほどじゃない。
私ははっきり椎菜が見えるし、白杖をつく音も聞こえる。
「先日の宿泊手続きに不備がありまして。
笹川さんのお名前が直筆で必要なんです。」
「笹川さん今総務課にいないから私から伝えて書いてもらうよ。また事務課に持って行くね。」
「ほんとですか?助かります!」
私は椎菜からファイルを預かって見送ると総務課に向かってもう一度歩き始めた。
コツコツとヒールの音だけが人気のない廊下に響き渡っていてなんだか少し、寂しくなった。
同時に心なしか笹川さんも私から遠ざかっていった気がする。
隣のデスクにいるのに話しかけられなくなったし連絡も来なくなった。
…やっぱり私のような愛想のない女より篠原さんのような可愛らしい女性の方がいいのだろう。
顔が愛くるしくて、性格も明るくて、あっという間に総務課に溶け込んだ。
「…資料確認お願いします。」
別に私には笹川さんと篠原さんがどういう関係になろうが興味はないけれど。
それでも自分の仕事を後輩にやらせたまま感謝の言葉もないのは少し腹が立つ。
「…ん?
宮川さん、この仕事って笹川のだよね?」
「…はい。篠原さんの教育でも忙しく手が回らないとのことで私が…」
「いや、じゃあこれまで笹川が提出してきた仕事は全て宮川さんがしていたということか?」
最近やけにミスがないなとは思っていたが…と続ける課長。
やはり気付く人は気づくのであろう。
いくら私の名前で笹川さんの仕事を提出したところで元々私の仕事ではないことを。
「いや、すまない今まで気づけなくて…
いつからだい?笹川の仕事をしていたのは…」
「デスマーチ中頃からお手伝いはしていました。」
「はあああ…」
呆れたようにため息をつく課長。
頭を抱えて唸っている。
その時も笹川さんと篠原さんは場内を歩いている。
私ですらまだ場内を案内されたことはない。
デスクに戻らず休憩に入った私は大好きなコーヒーを飲みながら場内を仲良く歩く2人を眺めた。
腕組みなんかしちゃって本当に仲がいいんだなあ…
お付き合いでもしているのだろうか…
「…まあ、私には関係ないけど。」
今日は勇太の命日だから定時で上がらせてもらうし、恐らく今日笹川さんと顔を合わせることなく上がることになるだろう。
篠原さんが入社してくるまでそれなりに仲良くできていたと思っていた自分がアホらしくなった。
男性たるもの、やはり女性らしさを全面に出している子を放って置けないのだろう。
私も別に守って欲しいと思うようなガラではないし。
…私には勇太がついてる。
それだけで他は何もいらない。
首に下がっているネックレスをギュッと握って私は人の少ない廊下を歩く。
総務課に向かう途中、椎菜に声をかけられた。
「一花さん!」
「椎菜?」
「丁度総務課に用があったので!」
「何か用事でもあった?」
事務課の椎菜は白杖を持ってクリアファイルを抱えている。
いつも私を見つけてくれる椎菜。
弱視で見えることが少なくなった今でも私がいるといつも声をかけてくれる。
「よく私だってわかったね。」
「一花さんはわかります!
清廉潔白なオーラがあるので!
あとみんなとは違う香りがするんです!」
だからはっきり見えてわかりやすいのだという。
自分の匂いなんて気にするほどじゃない。
私ははっきり椎菜が見えるし、白杖をつく音も聞こえる。
「先日の宿泊手続きに不備がありまして。
笹川さんのお名前が直筆で必要なんです。」
「笹川さん今総務課にいないから私から伝えて書いてもらうよ。また事務課に持って行くね。」
「ほんとですか?助かります!」
私は椎菜からファイルを預かって見送ると総務課に向かってもう一度歩き始めた。
コツコツとヒールの音だけが人気のない廊下に響き渡っていてなんだか少し、寂しくなった。
