情けなさすぎて涙すら出てきてしまった。
「おい笹川。大丈夫か?
ってなんだ宮川さんのこの仕事の多さ!」
同僚が唸ってる俺の様子を見にきてくれた。
そして隣の宮川さんのデスクを見て驚いた顔をして俺を見る。
「お前これ…」
「最初俺が後先考えずに引き受けた仕事なんだ…
んで今明日必要な書類作成してて…
宮川さんが代わりに引き受けてくれて…」
「…宮川さんが?意外だな。
未だに話したことないからだと思うが自分の仕事しかしなさそうなのに。
…だとしてもこれ今日中には終わらないだろ…」
同僚の言う通りだ。
今日中には絶対終わらないであろう山。
「…だと思って宿泊手続きしてあります。
夜通し仕事すると言って申請しました。」
いつもの鈴のなるような声が後ろから聞こえて。
振り向くと宮川さんがファイルを持って立っていた。
「さっき事務に行ったら知り合いが2人もいて驚きました。」
いつも通りの無表情で。
だけど少し嬉しそうに彼女は微笑んだ。
【笹川将也side END】

【宮川一花side】
「失礼します。総務課の宮川です。
河野さんがいらっしゃいますか?」
会計のファイルをとりに来た事務室にて。
宿泊手続きが終わりファイルを待っていると知っている顔があった。
「河野さんって…椎菜?」
「やっぱり一花さんだよね?」
「そして橘くん?」
「そうです。まさか同じ会社で働いてるとは…」
まさか転職した先で顔見知りに会うとは思っていなかった。
椎菜と椿。
私と椎菜は元々ネットを通して知り合った友達で椿はその友達ってことで知り合った。
勇太を失った時もよく話を聞いてくれたり、慰めてくれたりして…
「一花さん、今度ゆっくりカフェでも行きましょうよ!予定合わせましょ!
私病院じゃなければ空いてるんで!」
「そうだね。私もそんな感じだからまた連絡するね。」
椎菜からファイルを受け取った私は総務課へ戻り、笹川さんやその同僚の方に宿泊手続きも終わっている旨を話し、仕事に戻った。

主に、笹川さんが無駄に引き受けてしまった仕事達を。

それにしても椎菜がこの会社にいるとは驚いたな…
視覚障害があって周りの助けもあるだろうけど自立して仕事してる。
まだ18歳なのにしっかりしている女の子だ。
それに比べて私は…
【宮川一花side END】

【笹川将也side】
深夜になった今でも全く減っていかない俺のデスクの書類達…
隣の宮川さんも流石に疲れてきたのか目を擦ることも増え、目薬を使ったりとかなり努力してくれている。