南さんから黒木さんのお話を聞いた時、頭が真っ白になった。

”彰”という男は誰だ?
なぜ恋人である私の誘いより”彰”という男との約束をとった?
なぜ?
なんで?

醜い嫉妬だって事はすぐに理解できた。
けど理解しただけじゃ、理性を抑えることは不可能だった。


『薫さん、今夜リモート飲み会はどうかな?』
「幸助さん。ごめんなさい今夜予定があって」
『…その予定は”彰”という男性と会うことかい?』
「え!?なんで知って!」


束縛するつもりなんてなかった。
ただ考えるより先に言葉が出てしまっていた。


『薫さん”彰”と会うのは今後やめてほしい。』
「え、でも彰はただの」
『薫さん、貴方の恋人は誰だい?』
「…幸助さんです。」
『正直な所、私は薫さんとの結婚を視野に入れて交際している。』
「うん」
『薫さんは結婚は考えていなかったのかい?』
「えっと、それは…。」
『少なくとも私は考えている。だから私は他の女性と二人っきりになる時間は極力無くしている。そんな私に不誠実な行動だとは思はないかい?』
「でも毎日あってるわけじゃないよ。雨の日はあってないし…。」
『うん。でも晴れの日は毎日会っているんだろう?』
「そう…だね…。」


『ならやっぱり”彰”という男性と二人きりになるのは控えて欲しい。』
「…どうしても?」
『えぇ。どうしても。』
「…わかった。…今日話してくるね。」



薫さんを言葉でいじめてしまった自覚はある。
でも理性がきかなくて、私だけを見てほしくて。

薫さんの前では頼もしい大人な男性でいたかったけど、どうしても独占欲が働いてしまった。

だからこそ薫さんから”彰”が私に会いたいと言ってたと聞いた時は、私に対する宣戦布告だと思った。