13番目の恋人

「俊彦には、俺がここにいることは説明しているから」
 やっぱり、信用出来る人で良かったと微笑んだ。……迷惑はかけてしまったのだけれど。
「すみません、ご迷惑を。私、お酒は強いのだと勘違いしてしまって」
「そうだな、初めて飲むのにあれはまずかったね、止めなかった俺も悪かったよ、君は酔った事が顔にも言動にも出なかったものだから」
「初めてでは、なかったのですけれど」
「ああ、食前酒は除いて、それから親のを少し貰うとかも除いて」
 ……どうしてわかったのかしら。確かに、兄や父の飲むビールの泡をよく舐めさせてもらって
『小百合は酒が強いなあ』と言われた事があったから、そう信じていた。

「……言動に出なかったわけではないな。あの恋愛歴は、冗談だということにしておいたから、君も二度と言わないように。あまり、イメージが良くない。もちろん君の自由だけれど、人に正直に話す必要は、ないんだ。特に新しい恋人にはね、気をつけて」
「……はい、でも大宮くんに言ってしまいました」
「……あー……彼は、どうだろうな。もし、彼と恋人になることを望むなら……少しマイナスのスタートかもしれないけれど、彼も誠実な男だからなあ」
 野崎さんは「矛盾してしまうけどね、もう過去の恋愛歴を今の意中の人に言ってしまったなら仕方がないし、彼も君を本当に好きになってしまったら関係ないって思うかもしれないね」
と、説明してくれた。

……好きに、なって、しまったら……関係ない。