13番目の恋人

だけど、彼の忠告は最もだ。
「そうですね、あなたが悪い人ならば今頃は金品身ぐるみ剥がされて、何とか湾に沈んでいるか、山中に捨てられているんでしょうね。残念ながら、貴重品があまりないのですが……」
 と、部屋を見回す。
 
「……それは、本当に悪い人間だな。なかなかいないと思うぞ。そのパターンも、無くは無い。君は女の子だろう? 襲われるぞってことだ」
まるで、小さな女の子に言い聞かせるように彼は私に説明してくれた。
 
「破廉恥な(ほう)ですね」
「はれ……!? いや、まあ、そうだな」
「野崎さんが、いい人で良かったです」
笑って言うと、彼は眉を下げて、ため息を吐いた。
 
「君に……苦言を。二度とやめてくれ」
「……はい。だけど、私、何をしましたか?」
「俺と君は、プライベートで会う関係ではないだろう? 」
「……はい」
「君が、俺を信じきってカードキーを渡して来た。俺もどうかと思ったが、酔った君に正論は届かないし、宅配業者にあの態度を取られるとまずい」
「……はい」
 あの態度、とは。とにかく酔った私は、よくない態度だったのだろう。
 
野崎さんは、もう一度ため息を吐いたけれど
「……まあ、俺も放ってはおけなかったんだけど」
 と、小さな声で言った。