「彼女、真顔でジョーク言うんだ、ほら、君が言うとみんな本気にするから!」
 慌ててジョークにすると、その場をおさめた。
 
 今になってわかった気がする。俊彦と園田さんが、俺に彼女の《《見張り》》を頼んだ意味が。大宮もそれを察したのだろう、それ以上の追及をさせないように、違うテーブルへと彼女を連れていった。
 
「本当に冗談なのかしら」北口さんがそう言ったのを
「君たちの質問がね、結構失礼だったよ。それでもジョークで返してくれたんだ」と、さすがに注意した。
「もっと仲良くなって、男のいないプライベートな空間でそんな話はしろよ。彼女の事はよく知らないんだろう? これで、変な噂でも立てば常務に報告するからな」と、念を押しておいた。
 
 ただし、酒の場ではあるので
「確かに、あの流し方は彼女もあまり上手くはないな、まだまだだね。君たちの方が大人なんだから、女性として正しいスルー方法教えてあげたら?」
 と、それすらジョークにしておいた。
 
「ほんと、確かに~」何て言いながら、話が違う方へと逸れた事に安堵した。
 
 はあ、驚いた。後で彼女に少し注意をしておこうと思った。酔っているようには見えないが、あちらの男性社員の誰かが彼女を送る事態にならないように、俺が送ることにしようと決めていた。
 
単純に、そうしようと思っただけだった。