13番目の恋人

いつもより、少しフランクな服装の万里子さんはプライベートとあってか、いつもより表情も柔らかだ。威圧感を少し差し引いた万里子さんはただただ綺麗だ。もしかしたら、お仕事スイッチが入るとそう感じるだけで、今日みたいなキャピキャピしてる方が本当の彼女なのかもしれない。

「わあ、可愛い! 」
そう言ってディスプレイに使われているピンクのワッフルメーカーなんて開けて見ている。

「これも、可愛い~!」
そう言って、ピンクのハート型のホーロー鍋をお玉で混ぜるふりをしている。

「うーん、これも!」
今度はシリコン製のスパチュラを持ってる。色は勿論ピンク。

そこの一角は、これ見よがしなほどの新婚さんイメージだろうか……随分と乙女チックなディスプレイ。それに、万里子さんがまんまと食いついている。

……万里子さん。あんな淡いピンクがお好きなのね。と、思ったのが顔に出ていたらしい。

ご機嫌で持っていた重たいだろう鍋をそっと置くと、頬を赤らめた。

「違うの、知ってるの、でも、好きなの」
「何がですか、万里子さん」
「私に、似合わないでしょ。こんな可愛らしいピンク色は、だから、服には絶対選ばないのよ、だけど……家で使う物は、ピンクでも誰にも迷惑は掛けないでしょう?」

万里子さんはこれでもかと言うくらい焦っているようで、そう言い訳した。