最初は威圧的に感じた万里子さんも、話してみると、裏表のないハッキリした性格が気持ちが良いくらいで、萎縮しちゃうのは、“仕事が出来そうな美人”なのが少し、威圧的に見えるだけだと気づけた。

迫力のある美人。容姿端麗、文武両道……っていうのかな、あんまり美辞麗句が思い付かなかったけれど。頭が切れるだけでなく、武道にも精通しているらしい。
「もう、引退して久しいわよ。今はホットヨガと、時々ハンモックヨガ、水泳、キックボクシング、体幹トレーニングくらいしかしてない」

……。絶句。

「私……何もしていません。なかなか時間が取れなくて」
「時間が……とれない?」

そうだ、そうだよ。私より忙しい万里子さんがこんなに充実しているのに、私が時間が取れないだなんて、何の低落だ。

万里子さんは不思議そうな顔を私に向けた。

「おっとりしてるものね、小百合ちゃん」
「いえ、ぼーっとしているだけです」
「人それぞれ時間軸が、違うのよ。プライベートなんて、どう過ごそうと自由だわ」

万里子さんは、スタイルも、性格も、生活も無駄な物はまるでない感じだ。

私は真逆。何もしていないのに毎日時間だけが過ぎていた。時間を無駄にしているんだろう。“どう過ごそうと自由”だけど、期限がある限り、もったいない事をしてしているのだと思う。