「ねえ、頼人さん、食事はどこへ運ぶの?」
 
 頼人さんのマンション、広いリビングの大きなテーブルを無視して、キッチンから直接手を伸ばせる丁度良いカウンターもスルーして、頼人さんは「そこ」と、この部屋には小さすぎる不自然に置かれたラウンドテーブルを指差した。
 
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『絶対に捨てないで』頼人さんはあの日、そう言った。
 
「どうして、そう言ったの?」
「見合い話が来たら、君は実家に帰るだろうと思ってさ。その時に捨てられたら、嫌だったから。このテーブル、気に入ってるんだ。二人で丁度いいだろう?」
 
 頼人さんは大切そうにラウンドテーブルのカーブを優しく撫でた。私が自分で買える程度の物だからそんなに高級品でもないのだけれど。
 
 
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 こうやって一緒に住む様になって、このラウンドテーブルと椅子は頼人さんの強い希望でこの頼人さんのマンションに運び入れられた。
 
「ちょっとここだけ他の家具と浮いてない?」
「いいの、ここで食べたい」
 
 頼人さんは時々、子供みたいになる。
 
二人分のお皿を並べるとすぐいっぱいになって狭いけれど、
「今日は食後のデザートもあるよ」
 嬉しそうに笑う。
 一度お皿を下げてからしかデザートは置くところがないんだけれど、私がお皿を下げている間に、頼人さんがデザートを用意してくれるのだから、そんなに苦にならない。むしろ、とても楽しい。
 
 頼人さんが、切り分けたそれをお皿に入れてくれた。
 
「これ、大好き」そう言った私に彼は優しく目を細めた。