13番目の恋人

「和菓子にコーヒー」
「ケーキに緑茶」
「悪くないね」
 
 こっちの予想を裏切って、そんな頼み方をする客も少なくない。

「まさか、ここに老舗の茶屋まで入るとはね」

 そこの創業者の娘がにこやかに笑った。万里子さんは、社長の娘であること、そして誤解されやすい物言いと見た目で、従業員がやりにくいだろうと、俊彦の父親に頼んで俊彦の秘書にしたらしい。
 
「俺たちも見合い結婚だよ」と白々く言っているが……
「結局、みんな俺のとこで引き受けろって口利き頼むんだぜ」そう言われると、こちらは何も言えない。
 
「結果オーライ」慶一郎がそう言った。
「まあな、結局こんな仕事にも繋がったしな」

 ──
 
 時々、小百合とその店に訪れる。
 
 &(エスペルットゥ)
 
 古き&新しきなのか、和菓子&洋菓子なのか、和菓子&コーヒー?、洋菓子&抹茶?

 何&()何 なのかは来る人次第だ。
 そんなつもりで名付けられた。

 和菓子は本店から直送。日持ちはしないけれど、すぐに売り切れる。
 
 時々は小百合の祖父母が来ているらしい。なぜか、祖母はここを“パーラー野崎”と呼ぶ。来ていることは、どうやら家族には秘密らしい。