13番目の恋人

 その日、まだ日も高いうちに頼人さんは私を家まで送ってくれた。
 
「明日、迎えに来てもいい?」
「はい、お願いします」
「常識的に考えて、朝の6時は駄目かな」
 
 いつかの私みたいな台詞に、吹き出した。
 
「だって、早く会いたいだろう?」
 と、ふて腐れている。本当は、帰したくないのに、と、ぶつぶつ。
 
 家に着くと、出迎えた家族に丁寧にお礼を言ってくれている。
 
「正式にはまたお返事をと思っていますが、僕は彼女と結婚したいと思っています」
 そう言ってくれた。
 
「末永くよろしくお願いします」
 父親がそう返した。
 
 家に入ると
「イケメンねぇ、小百合ちゃんの旦那さんになる人」祖母が嬉しそうに言った。
「うん」
「小百合ちゃんも嬉しい?」
「うん」
 
 みんなの前でそう言って、私は顔が熱くなった。
 
「さあさ、着替えて。お着物、一度干しましょうね」
 
 祖母と母が器用に脱がせて衣紋掛けに掛けていく。
 
「素敵なお着物だって、褒めて下さったの」
 私がそう言うと、祖母が満足そうに微笑んだ。

「忙しくなるわよ、小百合ちゃん」
「うん」
 
 その日は、家族で食卓に着いた。私も祖母と母、姉とともに台所へと立つと
「お料理、教えてくれる?」
 と、聞いたのだった。