「頼人さん、大好きです」
 ふと、言いたくなって、にこにこ笑ってた野崎さんが真顔で停止した。
 
 少し、視線を泳がせると
「それ、わざと?」と聞かれ、何がだろうと思っていたら
 
「俺も、小百合のそういうとこ、可愛いから好き」と、言ってくれた。
「ありがとうございます」
 
 どういうとこか、わからないけれど、野崎さんが好きだと思ってくれるなら、嬉しかった。
 
 いつの間にか、野崎さんがすぐ前まで来ていて、不思議に思って顔を上げた。目が合うとすぐにキスをくれた。軽く、触れるだけ。それを数回繰り返すと、何度も角度を変えて落とされる。夕べの余韻なのか、キスだけでも、気持ち良くて力が抜ける。それを彼の腕が支えてくれた。
 
 離して欲しくない。
 「口、開けて、もっと」
 言われるままに従って、野崎さんが名残惜しそうに唇を離した。
 
「あー、休み欲しいなー」夏休み最終日の子供みたいな顔をしてそう言った。
 
「また、こうやって会いたい」私からそう言うと、野崎さんは嬉しそうに頷いた。
「もちろん、今度は着替え持ってきて。少しここにも小百合の荷物置いといてくれると嬉しい」
 
 いいのだろうか、そんな、私の荷物なんて……そう考えるのはやめて、私も嬉しい気持ちのままに頷いた。