「幸せ」
 ぽろり、心の声がもれた。
「うん、俺も、幸せ」
 野崎さんは、もう一度私のおでこにキスをくれた。
 
「野崎さん、年内でうちの会社から所属会社へ戻られるんですか」
「うん、その予定。引き続きの日野くん優秀だからね。予定通りにいきそうだよ」
「じゃあ、そろそろお見合いのお話とか……」
「向こうの会社へ戻るタイミングでね、役職も上がると思うんだ。未だに、結婚していないと一人前じゃないって思う世代もいるみたいで、その時には“婚約者”くらいはいた方がいいとまわりから言われてる。だけど、なんせこっちの会社の事が忙しいし、最後くらいちゃんとしたいじゃないか。向こうの会社も新しい試み……あ、さっきのカフェ展開とかね。そちらにも関わらないとで……、今は……見合いの事は、少し待ってもらってる状態かな」
 
 どのみち、そうか、もう少しか。
 
 「大丈夫、小百合が心配することじゃないよ」

 優しく微笑んで、彼は私にキスをくれた。
 
「さ、疲れたろ、もう休んで……」
 
 確かに、初めて結ばれたベッドの上でする話しじゃなかった。今こんなに幸せなのだから。鼻先を彼の胸につけると、大好きな彼の匂い。安心する。
 
 そのままいつの間にか眠ってしまった。