お互いの整わない息の下で、私に脱力したように体重をかけてくる。そんな彼を、愛しいと思った。

 初めての事が多くて、どぎまぎしたし、自分が自分じゃないみたいだし、やっぱり、ロマンチックのかけらもないような、あられもない格好に、恥ずかしくて死にそうだったけれど、彼が名前を呼んでは微笑んでキスしてくれて、ここに二人っきりなのだから、全部見せてって、言ってくれたし、最も途中からもう何も考えられなくなって、どうにかなってしまったのかと……思った。
 
 彼は私のおでこにちゅっ、とリップ音をさせてキスをすると、密着していた私から少し離れた。
 
 ベッドを整えると、「おいで」と、すぐ横にくるように腕をのばしてくれた。きゅっと、彼の胸に抱きつく。信じられないくらい、幸せだ。
 
「ごめん、夜更かしさせて」
「いえ、野崎さんもお仕事なのに……」
「小百合、最中だけ敬語がぬけるね」ふっと笑ってそう言った野崎さん。
「え!? うそ!」
 恥ずかしい、必死すぎてまったく記憶がなかった。

「ほんと! いつもそうだといいな」
 野崎さんは、うとうとしたような眠そうな声でそう言った。
 
「……ねぇ、野崎さん。えっちって気持ちいいんですね」
「うわ、そ、そっか、良かった。びっくりした」今度は急に目が覚めたみたいな声だった。