「……嫌なことはしないつもりだけれど、ちゃんと、小百合からも言って」

ベッドサイドに腰かけ、意思確認するように野崎さんは、じっと私の目を見つめる。この人のこんな目、全然嫌じゃない。
 
私は小さく頷いた。軽く唇を合わせると、彼は優しく微笑んだ。ゆっくりと倒されて、ポスンと肌触りの良い羽毛布団の中に体が沈んだ。

ベッド、すごいふかふかだなぁって、まだこの頃は考える余裕があった。
 
キスの合間、合間に息をして、彼に身をまかせていたけれど、さっきは『見るな』って言ってた彼が、一つ行動を起こすごとに、じっと見つめてくる。その目は、私に“大丈夫?”って聞いているような優しいもので、私が知ってる男の人は、こんな時にこんな優しい目をしなかったし、一方的にぶつけられた熱情は苦痛なだけだった。何でみんな、こんな事をするのだろうと思ったくらい。荒い息が顔にかかるのも不快だった。だけどそんなものなのだと思っていた。男性本位なものだと。
 
 彼は時間をかけて、ゆっくり、ゆっくり進めてくれた。初めての幸せを味わった。痛みも、精神的な苦痛もなく、直接触れる彼の肌と熱さと、動悸と滲む汗も。
 
 その重さも、全部……私を高めてくれた。