13番目の恋人

「すみません、紅茶入れていただいたのに、水羊羹だなんて」
「いや、ここの和菓子美味しいんだよね、水羊羹は初めてだなあ」
 
実家の和菓子を褒められて、少し気分が良くなってしまう。
 
「本当は本店の手作りの水羊羹が美味しいのですけど、バットで作ったものを切り分けただけのシンプルなもので、やわらかくて、押さえられた甘味が、するするいけちゃう。ただ、日持ちしないので本店だけの取り扱いで、しかも夏限定品で……」
 
つい、夢中で話してしまって、恥ずかしい。でも、野崎さんは嬉しそうに聞いてくれていた。
 
「本店は行ったことがないけど、美味しそうだね。来年の夏の楽しみにしようかな。うん、これはこれで美味いね」
「はい」
 
……来年の夏。彼は婚約者さんか、奥さんと一緒に食べるのかな。……って、今は考えないんだったな。

ふうっとため息が出てしまった。美味しいや。紅茶に合わせても、うちの水羊羹、美味しい。
 
「次のステップ……ステップ5、だっけ? 覚えてる?」
「キス?」
「その後のキスの次」

その後のキス……は、あのキスか。の、次?

「ね、恋人なんだし、もうちょっと力抜いて喋らない? 一緒にいて疲れると、思われたら嫌だし」