13番目の恋人

「……なーに、そんなはしっこに座ってんの」
野崎さんは、そうは言ったものの、私の前へミルクティーを移動させると、自分のカップもすぐ横に置いて、広いソファなのに、私のすぐ横に座った。
 
「頂きます」
「……どーぞ」
 
……紅茶の香りがふわりと鼻へ抜けた。
 
「美味しい……」
「うん、良かった。会社がね、カフェ展開することになって、茶葉とコーヒ豆も扱うようになって、今色々と試作中」
 
『会社』というのは、戻る方の、だろう。うちの会社はカフェだとしてとも空間プロデュースだ。
 
「そうなんですね」
「……ごめん」
「何が、でしょうか」
「疲れてるよね、君も。こんな遅くまで待たせちゃって、何か食べ……」
「水羊羹!」
「え、水羊羹?」
「あの、買ってきたのですが、冷蔵庫に入れたままで、あまりお腹に重くないものをと思ったので。あと、疲れた時には甘いものかなぁと……」
「ありがとう、頂こうかな」
「あ、はい、冷蔵庫勝手にあけてしまって……」
「うん、自由にっていっただろ?」
 
彼は微笑んでそっと私の頭を撫でると、立ち上がった。それから、小さいため息を吐くと
 
「もう少し、心を許して欲しいものだな」
と、言った。

  目の前には、芳醇なミルクティー。水羊羹に合うのだろうか。
 
「君にこの家を好きに使われたくないなら、留守中に入ってもらってないよ」
 
野崎さんは、ここから動かなかった私に呆れたのか、そう言った。