メッセージが一つ届いて、幸せな気持ちになる。これだけで、幸せだ。

でも、昼休みとか会社にいる時に送るのはやめることにした。交際を知られたのが大宮くんで良かった。これ以上誰かに知られるのはよくないと思う。別れた後が気まずいし。……ついそう思ってしまって、いちいち“別れ”を考えては払拭した。いつか、その日がくるまで。私は彼を好きで幸せな気持ちだけを感じていたい。
 
──閉じかけたエレベーターを開いて待ってくれた人に一礼し、中に乗り込んだ。ふわりと鼻腔に届いた、大好きな香りに、顔を上げた。
 
「あ、お疲れ様です。ありが……」
「このエレベーター、カメラはついてるけど、音声は拾わないから、前向いたまま聞いて。記憶力、良い方?」
 
意味はわからなかったが、頷いた。仕事上、すぐ覚えるのは得意だ。
 
「××××この後に、解除ボタン押して」
「……はい」
「住所はメッセージしておく。すぐわかると思う」
「……はい」
「悪いね、限界なんだ」
 
エレベーターが開くと、彼はそのまま行ってしまった。何の暗号だろうか。彼から伝えられたのは数字の羅列。
 
そう思った謎は、彼からのメッセージが来て解明された。彼の、マンションのロック解除キー。
 
『中で待ってて』とのことだ。