好き。
 自分が自分でなくなってしまうくらい、好きだ。

キスしてていてもキスしたくて、会ったばかりなのにまた会いたくて、もうわけがわからない。……この部屋、こんなに広かったのかな。
 
クッションを抱き抱えたまま、ラウンドテーブルまで行くと、野崎さんが座っていた方の椅子へ腰を落とした。テーブルも、こんなに大きい。
 
30分ほど経つと、スマホの通知音がして
『もうお風呂入ったかな? 楽しかった。たくさん買い物していてくれてありがとう』
 
野崎さんからのメッセージだ。そうか、野崎さんのお家はここからクルマで30分くらいのところなのか。まさか、あのまま30分動けませんでした、などと言えるわけもなく
 
『今からお風呂です。野崎さんも、お疲れ様でした』と、打とうとして、“今からお風呂です”は少し恋人っぽいけれど、“お疲れ様でした”は業務みたいだなと、一語打ってはカーソルを後退させ、やっとメッセージを送れた時には15分程経っていた。
 
『今からお風呂です。明日も、会えるの楽しみにしています』
 
 会社で、だけれど。楽しみにしているのは事実。彼からの返事があるか、つい待ってしまうのと、緊張で、私は先にお風呂に入る事にした。
 
お風呂から上がると通知のポップアップに飛び付く。『俺も』そう書いてあったスマホを胸に抱いた。俺も、の短いメッセージが嬉しすぎて。