店に着くと、曲げ木のシンプルな椅子がセットで売られていて、なぜ前回来たときに気づかなかったかは、さておき、座ってみるとしっくり来て、デザインもやっぱりしっくりきた。それは、セットなのだから当然なのだけれど。
 
「在庫、2脚ならすぐにご用意できますが」
店員さんにそう言われ即答した。

「早かったね」
「本当ですね」
そうなのだ。こんなことなら直ぐに動けば良かった。半年もテーブル買うのを我慢して、椅子がないのもまた我慢するところだった。

「これで、毎日快適だあ」
「持ち帰れますか? 」
「ええ、大丈夫です」
店員さんがすぐに準備に取りかかってくれた。
「助かりました、ありがとうございます。宅配ならまた1週間待たないといけないところだった」
「うん、車で来て正解だったね、せっかくだしもう少し店内見る?」
 
この前、万里子さんが立ち止まった新婚さんをイメージしたディスプレイ。想像するくらい、いいよね。
 
「さーて、パスタでも茹でるか」と、野崎さんがお鍋の前でそう言った。
「あ、じゃあ、私はお味噌汁」
「あれ、パスタって、どうやって作るんだっけ」
「あはは! そんなとこまで再現しなくても」
「似合うね、ピンクの調理器具」

……私は多分、ピンクは似合わない。
 
「うん、水色もいいね」色ちがいのスパチュラを持たされて、うんうん頷いてる。
 
「ブラック、も、案外いいね」
 
真顔で言う彼についに吹き出す。