13番目の恋人

「俺はね、まだ会ったこともない結婚相手がどう思うかより、今、君がどう思うかを考えたい。それで俺と結婚したくないと相手が言うなら、それはそれで婚姻なんて成立しない。俺の今の恋人は君なのだから、大切にしたい。考えているのは、それだけだよ」

それなら、私だって、野崎さんに嫌な想いはさせたくない。例えば、私と恋人になることで旧友である俊くんと疎遠になるような事はしたくない。

それなら、最初から野崎さんを好きになってはいけなかったのだけれど、どうしても感情のコントロールが利かなかった。自分でも戸惑うくらい、彼と一緒にいたかった。
 
「……今日は、こうしていたい。駄目ですか?」
「……君がそう言うなら。ただ、どうなっても知らないよ?」
「どうなっても、構いません」意味はわからなかったけれど、彼と一緒にいられれば、どんな風に過ごしても幸せに違いないのだから。
 
「……ごめん、からかったつもりだったのに、俺があせっちゃったな」

野崎さんが困ったように笑う。さっきから、ずっと、野崎さんは困ったように笑う。
 
「どうして、そんなに困ったように笑うんですか?」

私はこの人を困らせているのだろうか。だとしたら、どうしたらいいのだろう。