双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました

「それは、香坂さんの幸せを願ってのことです。香坂さんは大企業の御曹司なんですよね? 仕事が大変なときに迷惑をかけたくない、香坂さんの夢の邪魔をしたくないって言っていました」

「邪魔だなんてっ……!」

 思わず大きな声を上げてしまい、一気に注目を浴びて冷静になる。

「すまない」

 自分を落ち着かせるように深呼吸をして、再び飯塚さんと向き合う。

「俺が星奈のことを邪魔に思うことなど絶対にない。本当に星奈はそれだけの理由で俺から離れたのだろうか」

 ジッと見つめながら聞くと、飯塚さんは目を逸らした。

「すみません、これ以上は私の口からは……。この先は星奈本人に聞いてください」

 そう言うと飯塚さんはバッグから手帳を取り出した。ペンでなにかを書き、そのページを破いて俺に渡す。

「これが今の星奈の連絡先です」

 メモには電話番号とメッセージアプリのIDが書かれていた。

「ありがとう」

 これでいつでも星奈に連絡が取れると思うと、メモを持つ手が震える。