「先日、尾上さんという女性がうちを訪ねてきた。そこで脅されたよ。娘さんの行動次第で、うちの銀行からの融資を止めると」

「尾上さんが？」

　待って、彼女が言っていたやり方ってこのことだったの？

　どうして関係のない父の会社を標的にしたの？　尾上さんは私のことを卑怯だと言っていたけれど、それを言うなら彼女のほうだ。
　怒りで身体が震える。

　だけどこれで両親が突然訪ねてきた理由がわかった。そりゃ怒って当然だよね。縁を切った娘に、自分の経営する会社を危機的状況に追い込まれそうなのだから。

　あれ、でもそれならなぜさっき父は私に〝子供と一緒に帰ってきなさい〟と言ったの？

「明君のところから連れ去っておいて、他に婚約者がいたとは……。星奈、彼との結婚を認めるわけにはいかない。お前たち三人くらい父さんが養ってやるから帰っておいで」

「ちょっと待ってお父さん」

　だめだ、頭が混乱する。だって私は父に親子の縁を切られたはず。もう二度と家の敷居を跨がせないとも言われたのに。

　信じられない状況に混乱していると、母が説明してくれた。