神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

「この店は疲れが回復する程度の効果があればいいからって、純度100%1本から5本は作ってるって噂。だから効果が高いわけないのよ。買う方も女の子目当。ミミリアの作ったものが効果が高かったなんてきっと客のリップサービスよ」
 なるほど。ミミリアと親しくなりたい人が、ミミリアの作ったポーションを褒めただけか。

「お待ちください、そちらには、お勧めできるような女性はいませんので、どうか表に出ている娘から」
 ドタドタという足音が響いてきた。
 店長の慌てた声も聞こえる。
 皆がびくりと作業を止めて扉に視線を向けると、バタンと乱暴にドアが開かれた。
「あ」
 ディールの姿がそこにはあった。
「あの、私、テクニックには自信があるんです」
 すかさずダーナがディールの元に駆け寄る。
 ディールはダーナには目もくれず私の姿を見つけると、驚きと戸惑いの表情を浮かべる。
 すぐに、私の元に近づき、手首をつかんだ。
「お、お待ちください、ディール様、その子はまだ入ったばかりで、何の教育も出来ておりません」
 店長が慌ててディールに話かける。その後ろでダーナがチッと大きく舌打ちをして私をにらんだ。
「その娘をご希望ということでしたら、2,3日お待ちいただければ……」
 店長の言葉を無視し、ディールが頭を下げた。
「すまん。こんな店だとは知らなかったんだ。知っていれば教えたりしなかった……。普通のポーション屋だと思っていたんだ」
 そうか。ディールは知らずに紹介したのか。うん。なんとなくそうかなぁとは思ってたけどさ。
「リョウナ、俺と来てくれ。こんなところには置いておけない」
 ディールが店長を睨み付ける。
 店長がびくりと体を固くして、ドアの前からどいて道を開けた。
 ここから抜け出せる?
 固い板の寝床に、1日1個のパンだけの食事。理不尽な扱いをする同僚たち……。
 ディールがここから私を助け出してくれる。
 ぐっと奥歯をかみしめる。
 助けてくれる?
 傷を治し街へ連れてきてくれたところまでは、パズを助けたお礼だとしてだ。
 今助けてくれるのは何?私には何が返してあげられるの?
 これからも、ずっとディールに助けてもらい続けるの?
 ディールに見捨てられたら?その先は?
 20代……ワンピースを着て、かわいいミュールを履いて街を歩けばよかったって……。