神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

「マチルダ、私は夕飯抜きでお腹がすいているの。これで、夜に仕事に出た時に、パンでもいい、何か買ってきてくれない?」
 マチルダが笑い出した。
「くっはははは、分かった。買ってきてやるよ。これだけありゃ、パンにリンゴでもつけてやる」
 残りは2本。
「ダーナ、チェックをお願いね。瓶の口までちゃんと入っているし、これは時間をかけて薬研ですりつぶして作ったものだから色もダーナの作ったものと同じはずで、これがチェック通らなかったら、私はゼロってことになってしまうわ。店長はさすがにゼロ本なんておかしいって思うんじゃないかしら?」
 ダーナがぐっと唇を噛んで悔しそうな顔を見せる。
「どういうつもりだっ!」
「どうって……だから、昨日、駄目だと言われたものと同じ品質の物は、ダーナの手を煩わせる前に処分しただけだけれど?」
 ダーナがぎろりと私をにらんだ。
「それとも、昨日言ったことは嘘だったの?私が作った色の薄いポーションを駄目だと言ったのは」
「うっ……嘘なもんかっ!」
 ダーナが私の頬を裏手でパンっとはじいた。
「駄目だと言われると分かっていて、あのやり方でポーションを作るなっ!明日からは許さないからね!」
 はいはい。今日は、自分が横取りできると思って許してたけど、横取りできないと分かったから許さなくするのね。
 馬鹿よね。
 許さないよりも、自分も同じように作れば、ノルマなんて余裕で達成できるだろうに……。

 自分が不幸だからって、他の人も不幸にしてやろうって思う人間は、その愚かさに気が付かないんだね。
 人を同じように不幸にしようと足を引っ張ることに腐心するより、自分が不幸から抜け出そうと努力したほうがいいのに。
 店長がポーションを取りに来る。
「なんだ、今日はハナ25本、マチルダ20本、二人ともノルマ達成か。ダーナ23本、新入りは2本か……3日だけでずいぶん借金が増えてるぞ?もっと頑張れよ」
 店長が何も不審がらずにニヤニヤして出て行く。借金が増えることを望んでいるくせに。頑張れなんて思ってないくせに。
 夜になった。
 ダーナとマチルダは今日も仕事だと言って出て行く。それからしばらくしてハナも同じように籠を持って出て行った。
 寝たふりをして3人が出て行くのを待ち、むくりと起き上がって今日もミキサーでせっせとポーションを作る。