今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

「大丈夫ですか?」


慌ててその人に声をかけたんだけど。


「ヒイッ」


彼は慌ただしく起き上がり、転がるように走り去って行った。


陸上部かと思うくらい早くてびっくりした。


どうしたんだろう、なんだかひどく怖がっていたような気が。


「彼、転んじゃったみたいだよ」


兄は片方の口角を上げてニッと笑う。


かすかに意地悪そうな冷たい表情をしているように見えるのは気のせいかな。


「そうなんだ。大丈夫かな」


「まあ、平気だろ。あの様子じゃ2度とチーには近寄ってこないな」


「え、なんのこと?」


「ううん、なんでもないよ。それよりさっきの奴に告白されてたんだろ?
ちゃんといつものように言えた?」


彼は心配そうに私の顔を覗き込んできた。


「うん、ちゃんと言ったよ」


「そうか、偉いね」


柔らかく笑って頭を撫でてくれた。


そのまま大きな手のひらは私の頬に移動する。