今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

早口にそう言って駆け出していく。


「え?あの……」


彼の後ろ姿を茫然と見つめていた。


あんなに慌ててどうしたんだろ。廊下は走っちゃいけないのにな。


その人が廊下の角を曲がった直後にドスッと鈍い音がした。


続いて悲鳴みたいな声がしたので息を呑んだ。


「ひー、すんません」


さっきの人の声のような気がして後を追いかけた。


そしたら、廊下の角を曲がったところに思いもかけない人がいて驚いた。


「おにいっ……翔くん」


一瞬間違えてお兄ちゃんって呼びそうになったけど慌てて軌道修正した。


あやうくまたキスされてしまうところだった。


それにしても偶然こんなとこで会えるなんてラッキー。


「チー」


ズボンのポケットに手を突っ込みながら、ニコッと笑っている兄。


その足元に、なぜかさっきの男の人が転がっていて……。


なぜか痛そうにお尻を押さえている。


「え?」


あれれ、これは一体どういう状況なんだろ。