頭がクラクラしてどうにかなりそう。


せっかく砂浜の熱さから抜け出してきたのに、今度は彼の熱に溶かされてしまいそうだ。


「チー、会いたかった」


愛おしそうに頭を撫でられた。


「うん私も」


「好きだよ」


「私も」


強く抱きしめられて、頭の芯がぼんやりするくらいの幸せを感じて。


フゥッて甘い吐息が漏れた。


彼といれば心の底から安心する。


ずっとこうしていたい。いつまでも。


翔くん、ずっと覚えていてくれたんだね。


『将来、お兄ちゃんのお嫁さんになる?』


小さいころのプロポーズをこの時、ふいに思い出した。


『うんっ、なるー』


ニコニコ笑って私は即オッケーしたんだっけ。


それから兄弟では結婚なんてできないんだって知ってかなりショックだった。


結婚って言葉がトラウマになりそうなくらい。


私はその夢を持ってはいけないんだって諦めていた。


だけど彼はその約束を現実にしようと努力してくれていて。


それはぜんぶ、私のためだった。


「翔くんあのね」


「ん?」


「もうこれからは私のことを妹だって思わなくてもいいからね」


そう言って微笑んだら、彼は眩しそうに瞳を細めた。


妹ではなくて、翔くんの彼女として。


私は胸を張って彼の隣に並びたい。


私はこの時一つの大きな決心をしていた。