私は麦わら帽子を両手でギュッと握りしめた。


デートの時に兄が私の日焼けを心配して買ってくれたツバの大きなデザインの帽子。


今の私にはこれがお守り代わり。


はあっ、またデートの時のことを思い出したら彼に会いたくなってしまいそう。


しょんぼりしていたら、歌ちゃんが気遣うように声をかけてきた。


「千桜ったら、私の心配ばっかりしてくれてるけど自分はどうなの?」


オフホワイトの水着に身を包んだ彼女は同じ高校生とは思えないくらいカッコよくて健康的な色気に溢れている。


「へ?」


「この合宿の間中、西原くんがずっと千桜にベッタリじゃん。
お兄様は来ないしさ。一体どうなってるの?」


確かに西原くんは気が付けば傍にいてあれこれ構ってくる感じだった。


いつもだったら、そんな風に私に近づいてくる男子がいたら兄が黙っていないだろう。