彼はホッとしたように息を吐く。


だけど……。


真剣な顔でお願いしてくる彼にどうしても聞かずにはいられなかった。


「でもそれで石野くんはいいの?」


彼はそれには返事をしないで小さく笑って視線を落とした。


「じゃあね……」


その切ない表情が全部を物語っているようだ。


うそ……そんなことって。


好きなのに気持ちを閉じ込めて内緒にしなきゃいけないってこと?


彼はもしかしたら、歌ちゃんのことをあきらめるつもりでいるのかも。


本当にこれでいいのかな……。


歌ちゃんに今すぐに会って彼女の気持ちを尋ねたかった。


こんな時にスマホを取り上げられているなんて私ってなんて使えないやつなの。


早く合宿3日目になって歌ちゃんにも会いたいよ。


このままでいいわけなんてないんだから。


同時に私は翔くんのことを考えていた。


理由は全く違うけど、どこか私達と似ている気がして切なくなる。


どんなに周囲に反対されたって諦められない気持ちがあるんだってことを……。


私は知っているから。