「瀬戸さん、俺とデートしよ」


スマホの向こう側から西原くんの明るく軽い声が響いた。


「えっ、なんで?西原くんと私がデートしなきゃいけないの?」


私はクーラーのかかった自分の部屋のベッドで寝転びながら通話していた。


「いつも家にばかり閉じこもってたらダメだよ。たまには外で発散しないと」


「でもデートはちょっと……」


あれからすぐに夏休みに入ったんだけど、私は何をする気にもなれなくて部屋に閉じこもり気味なんだ。


「付き合ってる人でもいるの?」


「えっ、それは……」


実はお兄ちゃんと付き合っています、なんてとても言えない。


つい先日、私がうっかり口を滑らせたばかりに大変なことになったんだから。


いくら友達でも内緒にしておかないといけない。


同じ失敗は絶対に繰り返したくない。


「いないけど、でも」