side 翔


「翔坊ちゃん、最近機嫌がいいようですね」


「え、そうですか?」


執事の矢代さんにそう言われて思わず照れ笑いした。


確かに最近俺は最高に気分がいい。


千桜と付き合うことになって以来ずっと浮かれているかもしれない。


「ですが、お勉強に集中していただかなくては困ります」


「はい、すみません」


そうだ、今は矢代さんに勉強を見てもらっている最中だった。


千桜の顔が頭をよぎって、集中力が切れてしまっていたかもしれないな。


ここは伊集院家の俺の部屋。


子供の頃に使っていた2階の角部屋はいつきてもいいように家具を揃えて快適に過ごせるようにしてくれていた。


瀬戸家の俺の部屋の3倍くらいの広さはある。


「少し休憩しましょう。慣れない勉強でお疲れになったでしょう」


「はい」


勉強と言っても学校の教科とは少し違う。


伊集院家の経営する会社に必要なあらゆる知識を身に着けるための勉強だ。