彼女のそういう気持ちをわかっていてそのままにしておくなんて嫌だった。


「もう愛華さんに笑いかけても話しかけてもダメ。ううん近寄らないで」


「は?いやそれはいくらなんでも……」


「翔くんは私だけのお兄ちゃんなのに」


「チーがヤキモチ妬いてくれるのは嬉しいんだけど愛華は俺にとってはほんとにただの妹だから関わるなって言われても無理だよ」


彼もそこはどうしても譲れないみたい。


伊集院の父のためにも愛華さんとは出来れば良好な関係を築きたいんだっていうのはわかるけど。


彼女の気持ちにいまいち気がついていないようなのでモヤモヤする。


彼のその優しさや真っ直ぐさが、余計に不安になる。


「妹から彼女になるかもしれないでしょ」


「いやそれはチーだけだし」


「信用できない、だって始めは妹って思っててもそのうち好きになるかもしれないでしょ」


「いや、それはチーに対してだけだって」


彼はこの後、必死でなだめようとしてきたけど私の不安と怒りはなかなかおさまらなかった。


愛華さんが翔くんのことを妹としてなんかじゃなくて男性として好きなんだって確信したから。


妹のふりをして近づいて彼にこれ以上触れないで欲しい。


そんなこと想像するだけで凄く嫌だった。


こういうのって独占欲って言うのかな。


彼のことを誰にも渡したくないって強く思ったんだ。


こんな感情を兄に対して抱くのはおかしいけど恋人相手になら構わないはず。


やっぱり、私達もうとっくに兄妹の枠からはみだしていたんだな。