今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。

「お兄ちゃんとして?」


もう隠しきれない、兄はとっくに気がついているような気がしてて。


「お兄ちゃんじゃなくても好き」


彼は大きく目を見開いた。


「ほんとに?男としてって意味で?西原くんよりも?」


にわかには信じられないみたいで、不安そうに私の気持ちを確かめてきた。


西原くんのことをまだ気にしていたのか……。


彼はこんなに素敵なのに意外にも、自信が無いのかな。


やっぱり長い間、お兄ちゃんと妹だったからかもしれない。


だから、ちゃんと気持ちが伝わるように、はっきりと言葉にした。


「翔くんに恋してるって意味だよ」


言った後ですぐに恥ずかしくてカーッと顔が熱くなった。


「そうか」


翔くんの嬉しそうな笑顔が輝く。


ゆっくりと彼の顔が近づくからそっと目を閉じた。


唇にほんの一瞬だけ。


ためらうように触れるだけのキスが落とされて。


「……ッ」


あんまり心地よくて頭の芯が甘く痺れるような幸せを感じる。


だけど、それだけじゃなくて。


はじめてのキスは、かすかに後ろめたかった。たぶん彼も同じだと思う。


この感情を分かち合えるのは世界で彼1人だけ。


とうとう私たちギリギリで保っていた一線を超えてしまったんだ。
 

それなのにファーストキスの相手が翔くんで嬉しかった。


こんなことしたらいけないって頭ではわかっているのにそう思った。


見つめ合っているとまた2度目をされそうだったから、サッと俯いた。
   

「翔くん、私怖いの……」


「うん」


「お兄ちゃんとこんなこと……」


「チーはなんにも悪くないよ。俺が望んだことだから……」


彼は慰めるように私の頭を撫でてくれた。


「お父さんとお母さん、きっと悲しむよね……」