その日の我が家の夕食は両親と私の3人で食卓を囲んだ。


そこに兄はいなかった。


なんだか火が消えたように静か。


今日に限って兄の好物が並んでいたりして、余計に残念だった。


母も心なしか元気がない。


こんな時、私がもっと明るい話題で盛り上げないといけないのかもしれない。


だけど私の方も気持ちが沈んでいてそんな余裕が無くて。


兄が今頃どうしているだろうって考えるだけでどうしょうもなく寂しくなった。


きっと愛華さんのことだから、彼にベッタリくっついて離れないんだろうな。


そんな光景が浮かんできてモヤモヤした気持ちになってしまう。


「2人とも元気がないね」


父は私と母を見て怪訝そうな顔をする。


「どうしたんだい?
お兄ちゃんは明日には帰ってくるさ。
そんなに落ち込むことはないじゃないか」


「……落ち込んでないけど。愛華さんのわがままに付き合わされてお兄ちゃんが可哀想」


ムスッとしながら父に返事をした。