焦りと苛立ちを含む怒声の直後、誰かの蹴りが目の前を掠めて覆い被さっていた男が吹き飛んだ。
ズサァァっとものすごい音で倒れ込んだのを合図に、他のチンピラたちが一斉に突進してくる。
男を蹴り飛ばした────御影さんの元へ。
「御影、さ……」
「悪い、もう少しだけ耐えて」
しゃがみ込んだ御影さんが私の頬に親指を滑らせ、泥汚れを拭ったあと……
抱き起した私の肩に、脱いだジャケットを掛けてくれた。
それからすぐに男たちへ向き直り、
「ぐふっ……」
「……ガハッ」
半殺しにする勢いで、次々殴り捨てていく。
……勝負は一瞬だった。
1分と待たずに、路地裏の傍らには男たちが山積みになっている。
すごい……こんなに強かったんだ。
「……」
「、…」
激しい雨が降りしきる中、傷一つない体で、雫が落ちる濡れた髪を揺らしながら御影さんが私の前にしゃがみ込む。


