眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす




……冷たい。



露わになった肌に雨粒が当たって、ひどく冷たい。


男の手の感触も、雨も。


御影さんの手は、あんなに熱かったのに。



でもあの手は今頃、……小町さんに触れているんだ。




彼女、なのかな。


好きって、あの人には言うのかな。

余裕のない表情で、額に汗を滲ませて、甘いキスを落としながら小町さんを抱きしめるのかな。



想像したくもない光景が、この状況からの唯一の逃げ道みたいに脳裏に浮かぶ。


ああ、もういやだ……

こんなことなら早く意識を手放したい。



さすがの神様も、見かねて願いを叶えてくれるんだろうか。

朦朧とする意識の中、徐々に光が薄れていって……



諦めなのか限界なのか───瞼がそこで落とされた。







───っ……、みのり!!







……誰か、来てくれた?


ううん、違う。これは夢の中だ。





───ハハ、王子様のお出ましか。そのキレイな顔が傷つかないうちに逃げたほうがいいと思うぜ?





これは……もしかして夢じゃなくて、昔の記憶?


そうだ私、前にもチンピラに絡まれたことが……