眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす




「……あれ?」



廊下に出て驚いたのは、ここにいるはずのない人が立っていたから。



「リクくん、白夜って女の人もいるの?」

「ああ、あの人は小町さんっす」

「小町さん?」



少し遠目からだけど、たぶん同じ歳くらいの女の子。

Tシャツにスキニーデニムというラフな格好に、どうしてかバケツを持って歩いている。



……なんでバケツ?




「小町」



聞こえた声に心臓ごとハッとしたのは、彼女に話しかけたのが部屋を出てきた御影さんだったから。

小町さんという人の前に立った彼を見て、更に心臓がドクンと揺れた。


だって……御影さんの指先が、迷いなく目の前の頬に触れている。



……だれ?

どうして触ってるの……?



「どうせ最上階行くんだろ、ついて来い」

「……ありがと」



最上階……?

あの部屋に、その人を連れて行くの?




心臓が、ものすごい勢いで早鐘を打つ。